第3章 【目に星が飛んだ話】
だが自分の気持ちに整理が付けられていない以上、安易に返信するのははばかれて僕はスマホをしまい直した。
そうこうしている内に、塾に辿り着いた。
ガラス張りの扉の脇に、部外者を阻む防犯カメラが取り付けられている。
そっと中の様子を伺うと、入り口に受付があった。──あそこに声を掛けて、神薗さんを呼び出してもらおうと、ガラスの扉に手を掛けた時。
「修哉くん?」
「うわぁっ!?」
背後に目当ての人物が現れたものだから、肝が小さい僕は情けない声をあげてしまう。
「ど、どうしてここに!?」
小胆な態度に、神薗さんは伊達眼鏡をきらりと光らせて目を細めた。
「休み時間だから、コンビニに買い物に行ってたのよ。──キミの台詞をそのまま返すわ」
どうしてこんな所に?と言う神薗さんの言葉は酷く冷たい。
彼女は外にいる間、他人の目を気にしているからわざと冷淡に振る舞うと知っていても、いざ前にして見ると僕の心はしおれて枯れてしまいそうだ。