第3章 【目に星が飛んだ話】
影が長く延び、カラスが鳴く夕暮れ。
トボトボと歩く僕は、神薗さんに会う当てが外れて思い切り肩を落としていた。
「…まだ塾、だよな」
マンションのエントランスでインターホンを鳴らしてみても出なかった。駐輪場を覗いてみれば、彼女の愛車が無い。
学力を高めようと毎日塾で勉学に勤しんでいる神薗さんは、自習もしてくるから帰りは九時を過ぎると言っていた。
「会うだけ、会えないかな」
一目で良いから、彼女の顔が見たい。
通っている塾の名前は聞いていたし、大体の場所は分かるから行ってみようか。
迷惑になるのは百も承知で、僕は駅前に足を向ける。
その時、歩く揺れに合わせてポケットに入れたスマホが震えた。きっとセトからだろう。心配性なアイツのことだから、僕を探してくれているに違いない。
確認すれば、ずらりと並ぶ不在着信のメッセージ。
『連絡下さい』『キドも怒ってないです』と律儀にメールまで寄越していて、僕は苦笑した。