第3章 【目に星が飛んだ話】
心配そうに見つめて、声をかけて、手を差し伸べないで。
秘密を抱える僕は、その手を掴む事が出来ないのだから。
二人の優しさが、僕を傷付ける。
「僕を見るなぁあ!!!」
叫んで僕は駆け出した。
これ以上、僕の醜態を見られたくなかったから。僕は道化を演じることを定められた化け物だから。
二人と同じ場所に立つことは出来ないのだ。
『私も皆の目を欺いてるの──キミと同じね』
ふと、神薗さんの言葉がフラッシュバックした。
「神薗さん…」
無性に、彼女に会いたくなった。
僕を同類だと言って笑った彼女に、情けない僕を笑って欲しかった。そうすれば僕も、笑い話として今回の件を処理できるような気がする。
他力本願だけど、今の僕には神薗清子が与えてくれる“居場所”が必要だったのだ。
「助けてよ…」
ぽつりと口を出た言葉を、僕は無かった事にして歩き始めた。
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