第3章 【目に星が飛んだ話】
熱くなった息を吐き出して、横目で二人を見やれば、案の定酷く傷ついた顔をしていて。
──僕は何を、やってるんだ。
──僕はずっと独りで耐えてたんだ。
相反する感情が、僕の心に渦巻いていく。
これ以上口論になれば、いらぬ事を吐き出してしまうのは明白だ。僕は白旗を上げて降参する。
「──なーんて、熱くなっちゃって僕らしくないよね。ゴメンゴメン」
キドが嫌う薄ら笑いで場を和ませようとする僕。
本当はそうすることしか知らない僕。
二人は本当の僕を知らないから──あれ、本当の僕って、何なんだろう?
「カノっ!?」
セトが声を上げた。
顔を上げれば、キドの面食らったような表情があって。
「…カノ、お前…」
僕はようやく、自分が泣いていることに気付いた。
「──っ!?」
濡れる頬に、思わずたじろいだ。
二人の前では絶対に泣かないと決めたのに、止めようとしても止まらない涙。
「カノ、本当にどうしたんすか?」
セトの手が、そっと肩に置かれた。心配そうに覗き込んでくる瞳に心を読まれそうで、僕は反射的に目を逸らす。
目線の先には、先程の臨戦態勢を潜ませたキドが、同じように心配そうにこちらを見つめていて。
「み、見るな…」
僕は震える声で、言葉を絞り出した。