第3章 【目に星が飛んだ話】
「こ、怖がられなかったの!?気持ち悪いって言われたりしなかったっすか!?」
「ぜーんぜん。むしろ『良いもの見せて貰った』って御礼言われたくらい」
彼女が何を意図して礼を言ったのかまでは分からない。
「……何だか、ちょっと会ってみたいっすね」
セトの言葉に、ピクリとキドが反応した。
前のめりになるセトを下がらせて、一歩僕に近づく。冷ややかな空気が恐ろしくて、次いつ蹴りを入れられても良いように彼女の足に注意をはらった。
「……カノは」
キドの声が震えている気がした。
とっさに面を上げた僕が見たキドの顔は──
「その人に、お姉ちゃんの姿を重ねてるだけだ」
歯を食いしばって、怒りと悲しみがない交ぜになった顔で涙を堪えていた。
「お姉ちゃんを失った喪失感を、そいつで埋めようとしてるんだろ」
「そんな訳──」
「全くないと言えるのか?」
キドが普段よりも男っぽく喋るのは、怒りを抑えてるから。
「…お前がしていることは、お姉ちゃんに対する裏切りだ」