第2章 【目を丸くする話】
見れば分かるが、状況に頭がついていかなくて僕はあえて聞いてしまう。
「晩御飯、食べてくでしょ?」
神薗さんはさして僕の話に興味がないようで、エプロンを付けるとテキパキと料理を始めた。……僕、まだ食べていくとも言ってないんだけど。
「そういやさ、神薗さんって学校と家じゃ雰囲気違うんだね」
無言になるのが気まずくて、適当に話を振る。
実際、学校で見た彼女はガードが堅そうな優等生タイプだが、家ではジーンズの短パンに白いTシャツ、解いた三つ編みが肩に掛かっているラフな格好だ。
「へぇ、あなた私のこと知ってるんだ」
眼鏡を外した丸い瞳が、意地悪そうにつぃと細まった。……僕は馬鹿か。
やってしまった失態にうなだれる僕に、神薗さんは小さく笑った。
「まぁ大方、楯山さんの姿で学校に忍び込んでたんでしょ」
「…何で知ってるの?」
変に隠し立てをするのを止めて、素直に聞き直す。その方が神薗清子と話す上では得策のような気がした。
「それこそあなたと楯山さんの雰囲気は、まるで違うもの」
見ていて分かったわと、沸騰した鍋にパスタを投入しながら彼女は言った。