第2章 【目を丸くする話】
気を取り直し、一通り室内をぐるりと見渡してから、自分の身体に視線を落とす。
あれから10分程しか立っていないが、元の姿に戻る気配がない。こんな事は今までに無かった事だ。
しかし、神薗清子という人間は、僕が怖くないのだろうか。
それは彼女の平静な態度を見れば分かるが、僕の能力を見て──ましてや死者の姿を見て恐れなかった者はいない。
「…何か、企んでるのかも」
顎に手をやり頭を捻るも、たかが知れる僕の脳みそでは神薗清子の心理など分かるはずもなかった。
うーん…と唸る僕の耳に、着替えを済ませた神薗さんが戻ってきた気配が届く。
「まだ戻らないのね」
淡々と言われて、僕も少し投げやりになってきた。
「あーぁ、このまま戻らなかったりしてね」
「それは困るでしょうね」
何せ楯山文乃は投身自殺してこの世に居ないことになっている。この姿のまま生活していく事は、一生日陰者として生きる事を覚悟しなければならない。
「……何してんの?」