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目が届く話【カゲロウプロジェクト】

第2章 【目を丸くする話】


神薗清子の家は、遊歩道の先をちょっと行った所にある高層マンションのワンフロアだった。

「親はずっと昔に離婚して、母親が私を育ててくれてたんだけど、つい最近男と出て行っちゃって」
「…それって、母親にカレシが出来たの?」
「そうそう。まぁ家に上がり込まれてそのまま居座られるより、新しい愛の巣を探して出て行ってもらった方が子供の情操教育上よっぽど宜しいわ」

早口にそうまくし立てながら、冷蔵庫の扉を閉める神薗清子。

僕はリビングのソファに腰掛けながら、学校では殆ど口を開かない彼女の姿を思い出してただ呆然とするのみだ。

「はいどうぞ」
「…どーも」

僕の前のテーブルに麦茶の入ったコップが差し出された。僕は短く礼を言ってそれを受け取る。

「着替えてくるから、適当にくつろいでなさいよ」

リビングを出て行く前にテレビのリモコンを渡してくれたあたり、彼女は意外に気配りが上手である事に感心する。…って、そんな事に感心してる場合じゃないだろ!と自分にツッコミを入れて思わずうなだれた。

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