第8章 after
読んでいると、隣にエルヴィンがいることも忘れて涙を流していた。
自分は何も気づけていなかった。
リアがどんな風に過ごしていたのか。あいつは自分が忘れていくことを自覚していたなんて知らなかった。
すると先ほど渡された栞が目につく。
「…これは?」
「ここから帰ってきたあの日、リアが離さなかった花だよ。ずっと握っていて萎れ始めていたから私が栞にしたんだ。」
足元を見ると同じ花が揺れている。
「これが私の後悔だ。あの時リアにこれを渡していれば彼女はお前を思いだしていたかもしれない。
だが私はそれが恐くて渡せなかった…。」
悲痛な表情のエルヴィン。
「それで記憶の鍵か…。」
栞を握りしめる。