第5章 飛翔
案の定両親の目が泳ぎだし、口が止まった。
両親から目をエルヴィンさんに戻すと、再び目が合った。
エルヴィンは前屈みになり頬を緩める。
「君が誰のもとでどんな人生を送ろうが君の自由だ。だが生命を無駄に使うことは、先に逝った先人やこの平和を創り出す糧となった者達に対する愚弄だからね。」
リアは再び俯くが、両親は言葉の意味がわからず首をかしげる。
「君が嫌いな世界を私に預けてくれないか。
自分を認めてくれる者達と共に、自由な世界で生きよう、リア。
君が君自身を嫌うならば、
私が君を大切にしよう。」
エルヴィンの横にいた兵士は言葉の意味を理解したのか、目を見開いてエルヴィンを見ていたが、エルヴィンはリアから目を外さない。
「…どうしてそんなに私の背中を押してくださるんですか。」
リアは俯いたまま顔を手で覆い呟く。
「私は以前にも君を見たんだ。」
「…私は家から出たことはありません。」
「いや、家の中にいる君を見たんだ。」
リアは思わず顔を上げる。