第5章 飛翔
「3年前だ。私はロイ・フランケル氏の葬儀に出席していた。」
「お兄ちゃんの…。」
リアがそう呟くと、両親は耳を塞いで震えながら涙を流し始めた。
両親が兄をどれだけ愛していたのかヒシヒシと伝わってくる。
しかしそれは、同時に両親が自分を愛していないことを思いしらされてしまう。
「君のお兄さんは優秀な方だったようだね。私はその君のお兄さんが君と引き合わせてくれたのではないかと思っているんだ。」
リアの頭の中では次々とロイの優しい表情が思い浮かんでは消えていた。
「私はあの日葬儀場から君を見たんだ。出口の無い迷路で彷徨う君がずっと目に焼きついて離れなかった。一緒に出口探そう。」
エルヴィンはリアの手を両手で包むと、故意にか顔を近づけ頬を緩める。
「…外はどんな感じですか。」
リアは涙を目に溜めたまま顔を上げる。
「君にとって必ずしも自由とは言えないだろう。生きることには必ず縛りがあるからね。だが…扉を開けなければ見えない世界がある。扉を開けるかは君が選ぶことだよ。」
リアは少し考えると、車椅子を回して両親の前へ進んだ。
「お父様、お母様。今までお世話になりました。産んでくれたことだけは感謝してます。…どうかお元気で。」
そう言うとリアはエルヴィンの方へと向きを変え、1番の笑顔で笑った。
「エルヴィン副隊長。よろしくお願いします。」
そこには迷子になっていた少女の姿はすでに消えていた。