第5章 飛翔
「…それは本心ではないだろう。私は君の心が知りたいんだ。」
全ての考えが停止する。
「私の…心?」
「君は自由になりたくないのか?君は自分の足で立ち上がる前から歩くことを諦めているよ。
君は何が気に食わないんだい。
自分を認めない人間か?
自分を閉じ込める環境か?
……自分を諦めた自分自身か?」
全てを言い当てられて心が揺れ動く。無意識に涙が止まらなくなっていた。
「私は…「何を言われていますの?」」
両親が部屋にもどって来て会話を遮る。
リアは慌てて涙を拭った。
私は今何を言おうとしていたんだ。自由なんか必要ない。自分を捨てたのは紛れもない自分自身じゃないか。
「エルヴィンさん。あなたは娘の結婚を進めるためにいらしたんでしょう。何のお話をされていますの?」
するとエルヴィンは肩で笑いだす。
「これは失礼。リアさんの美しさに魅せられつい手が出そうになりました。」
リアが顔を上げてエルヴィンの顔を見ると、目が合いエルヴィンの頬が緩んだような気がした。
「しかしリアさんにそんなご趣味があるとは。フランケル氏はどう思っていらっしゃるのですか?」
……いつ私が趣味の話などしたのやら。このペテン師は。
リアは呆れつつも両親の顔を見る。私の趣味なんかこいつらが知るわけないじゃないか。