第2章 運命は残酷で
最近はずっと自分がこの閉じた瞳を開けてきた。
最初に感じたあの感動は、毎朝リアを起こす度に俺の心を溶かしていく。温かく、柔らかい。
だからこそ人も巨人も殺したこの手で触れると壊してしまわないか、離れていかないかと不安になる。
いい加減自分の気持ちをはっきりさせよう。
この瞳が開けばまたいつものように笑ってくれるのか。
しかし、医師の言葉でリヴァイの考えは一瞬にして消えた。
「単刀直入に言おう。
彼女の記憶はそのうち消える。」
エルヴィンとリヴァイの顔から色が消えた。
「…これからどうなる。」
エルヴィンは平静を装い、
腕を組む。
「今までは部分的な記憶の乱れだったが、記憶が消え始めているようだ。先程目を覚ました時に問診したが、答えられないことがいくつかあった。」
医師は深く息を吐く。
「おそらくこれから記憶はどんどん流れていくだろうな。
忘れる訳じゃねぇ、記憶が消えるんだから思い出す事は無い。」
世界から色が消えたようだった。