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遠い花

第1章 花


「ど、どうしたの?大丈夫?」
悶えていたら橘さんが心配そうに覗きこんできた。
「だ、大丈夫!です!ごめんなさい!」
顔が近い!
真っ赤な顔は見られなかっただろうか…。恥ずかしさの余り思いっきり顔を逸らした私を人見知りか何かと思ったのか橘さんは別の話題を持ち出した。
「百合ちゃんは何年?俺は2年なんだけど…」
「私も2年ですよ」
「一緒だね!部活とかしてないの?あと百合ちゃんの学校ではどんな事してるの?」
"学校"。
その言葉がキッカケで私の頭を忌々しい記憶が駆け巡った。
「…百合ちゃん?」
黙り込んだ私を心配したのか橘さんはそっと私の肩に手を置いた。ゾッと鳥肌が立って思わず橘さんの手を払ってしまった。
「…ぁ、ごめんなさい。びっくり…しちゃって…」
「…ぁあ、うん。大丈夫だよ。急に触ってごめんね」
やってしまった。
その言葉だけがアタマの中をぐるぐる回った。
よりによって、忌々しい記憶と心配してくれた親切な橘さんを重ねてしまった。
自分の行動が生んでしまった重い重い沈黙に耐えきれず私は駆け出した。
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