第3章 恋
橘さんが好きだと自覚してから数日。
良かったらまた練習に来てね、と誘ってはもらっていたものの、おばあちゃんの手伝いに夢中でつい行きそびれていて。
「…来ても大丈夫だったかな…」
プールサイドまで来て、今更、練習を見学させてもらうかどうか悩みに悩んで一歩も進めなくなっていた。一人でいるとついつい考え過ぎてネガティブになるのは悪い癖だと分かっていても止められない。
「あー!!!百合ちゃんだー!来てくれたのー!?」
「っ渚くん…お、おはよう、ございます」
「もぉ~!百合ちゃんってば全然来てくれないから僕なにかしちゃったのかと思ったんだよ!」
渚くんがむぅっと頬を膨らませる。
私が思わずごめんと謝ると渚くんはにっこりと笑った。
「うそだよ!僕の方こそごめんね?いじわるしちゃった。ねぇ!今日は練習見ていってくれるでしょ?」
問題はそこだった。私はまた橘さんの泳ぎを見てみたいとは思っているけど、誘いをずっと無視していた私なんて感じ悪い女だと思われてるかもしれない。
渚くんは返事をしない私を不思議そうに見つめている。
いっそのこと渚くんに聞いてみようか。利用しているようかもしれないけどこのまま黙っているわけにもいかないだろうし…。
「…見学しても大丈夫かな?」
「あったりまえじゃん!ほーら行こっ?まこちゃんも喜ぶよ!」