第1章 妖精の尻尾
だが、事は向こう側から起こしてくれた。人々の叫び声と、胸が悪くなるような笑い声。
土煙があがり、私たちは急いでそこへ向かった。
煙が晴れて見えてきたのは、数十人ほどの賊。ギルドまるまる一つというわけではなさそうだ。
「なんだてめぇら?そこ邪魔だからどいてろ。」
「どかねぇと痛い目見るぜ?」
背中に気配を感じ、気がつくと手首を取られ、首の周りには腕が回されていた。頭の上にいたエミアは今はグレイの頭上であたりを睨みつけている。
「ヴィナを人質に取ろうってか。」
「そうよ、裸の兄ちゃん。女は取ってしまえばこっちのもんさ。」
「俺たちは無慈悲だぜ?おい?」
馬鹿らしい笑い声を再びあげる賊。
私は上を見上げた。あたりを冷気が漂い始め、私の自由を奪っていた奴が徐々に凍り、首にまわされた腕は既に氷漬けになっている。
「な、なんだこいつ…氷の魔導師か…?」
「早く離さないと、その氷、破裂するよ。」
その言葉に一瞬だけ緩んだ手を私は見逃さなかった。奴の鳩尾に肘を入れ吹き飛ばす。
討伐はものの数分とかからず私たちの勝利に終わった。