第1章 7月7日
ひょいと、身を乗り出して左側をのぞいてみる。
私の部屋と同じ南についている窓。
彼の部屋の明かりは全くついていないし、よく見れば、隣の家はちょうどその奥にそびえるマンションの影になっていた。
真っ暗なはずだった。
寂しい顔した星に帰りたい宇宙人・・・。
あながち間違っていないか。
中学二年生、夏。
優菜は完全に行き詰っていた。
そんな身の内を話すつもりなんてない。
けれど、その時の私はなぜか違っていて。
すらすらと言葉が出てきた。
自分を気にしてくれた暗闇の主に聞いてもらいたいと思ったのかもしれない。
「この星の人と、合わないんだ」
「合わないの?」
暗闇からは問いかけが来た。
大丈夫だ。
向こうも聞いてくれるつもりなんだと感じる。
「周りにいる人たちと自分はちょっとちがうのかもしれないって思うことがあるの。」
「違う?」
「・・うん。例えば周りの人が楽しいということが楽しく思えなくて、周りの人がつまらないっていうものが楽しく思えたりするの。」
「・・・・。」
「きっと、宇宙人だったからなのね。」
シンとしてしまったので、冗談っぽく言ってみる。
「浮いてンの?」
と、聞かれ、地面から?と聞こうとしてやめた。
彼の真剣な声が、
そんな風におどけなくても、話を聞くから。と言ってくれているような気がしたから。
姿が見えないことも手伝って、感情はさらに露わになる。
「・・そう、だね。ういてるの。周りが笑っていても、私は一つも面白くないの。」
「で、一人浮いたの?」
「ううん。逆だよ。うかないようにしたの。」
顔だけ、笑っている、自分。
夜のテレビ番組。
芸能人の恋愛事情。
最近のはやりアレコレ。
若手芸人のギャグ。
そして、一番盛り上がる定番。
誰かの悪口。
何一つ楽しいことなんてないのに、一緒になって笑った。
笑っていないと取り残されてしまうような気がして・・・
そうして笑っているうちに、大切なものが壊れた。