第4章 雨上がり
・・・・しばらくの沈黙。
優菜から話が続く気配はなく、嗚咽だけが聞こえている。
―――春樹は十分に間を取った。
彼女の想いを聞く・・・・
それは今、できた。
気のきいた事を言ってやる・・・・
そんなセリフを考える余裕はすでにない。
この距離がもどかしかった。
「・・・そこの雨戸、開けて。」
「・・あ・・まど?」
こっちの家を建てているときから、それは閉じられたままだろうからきっと彼女は知らない。
春樹はベッドに上がってそこにあるもう一つの窓を全開にした。
キキィ・・・と金属がこすれるような音がして、ゆっくりと目の前の鉄の壁が動く。
よほど重たいのだろうか、俯き加減で雨戸を押す優菜がそこに居た。
こちらに気づいていない。
春樹は腕を伸ばして、雨戸を開けてやる。
はっとして、見上げた優菜と目がった。
その目は潤んでいて赤くて・・・
「俺が、教えてやるよ・・・」
自分よりも一回りも二回りも小さい体のくせに想いをいっぱい抱えて・・・
「無理かどうか、頑張ってるのかどうか・・・それから大丈夫なのかどうか・・・。」
もう・・・分かったから・・・
苦しみの中・・一人で戦い続けていたこと・・
「だからもう、自分一人で考えんな。」
俺は手を伸ばして彼女の頭に触れた。
そこにはあるのは50センチ先の、君の姿。
いつの間にか雨は、上がっていた。