第4章 雨上がり
窓から身を乗り出して優菜の様子を見ると、彼女は手すりにもたれている。
体調はよさそうだが、視線は真っ直ぐ下へと落ちていた。
「行かなきゃって・・頭では分かってるんだ。」
「・・・・。」
「なのに、身体が言うことを聞かなくて・・・」
「・・・・。」
「おかしいでしょ、自分の身体なのに・・・」
「・・・・。」
「でも、本当なの・・・頭でどれだけ大丈夫って言っても、全然・・・言うことを聞いてくれなくて具合が悪くなるの・・・」
「・・・・。」
雨の間をぬってこちらへと流れてくるその声は、彼女の苦しみが溢れていて・・・
当然、学校にも行ってないのだから話す奴なんていないだろう事も分かっていたし・・・俺はもう、さっきまでのように何かを言わなくては…とは考えなくなっていた。
ただ、その痛々しい想いを全て吐き出させてやれたらと思った。
「・・・・・・・・・・・お母さんが・・・」
少しのためらいの後、さらに声のトーンを落として彼女は言う。
「・・・・お母さんが、頑張れっていうの。」
「・・・・・・・・ん。」
「でも・・頑張るって・・・難しくて・・・。」
「・・・・・・・。」
「・・どこまでやれれば頑張ってるって言っていいんだろうとか、そもそも何を頑張ればいいんだろう・・・とか・・・」
だんだんとその声に嗚咽が混じる。
「・・・一度来た担任の先生は無理するなって・・・言ってくれて。でも・・無理っていうのも、どこまでが甘えで、どこからが無理って言ってもいいのかな・・・って。・・もう・・全然・・あたし・・分からなくて・・・」
「・・・・・・。」