第3章 引力
「顔がいいから好き、とか、格好いいから好きとか。運動ができるから好きって方が分かり易くていいじゃん。」
そう言って彼は笑う。
「えー!でもそれじゃぁ、芸能人を好きになるようなのと一緒じゃない?顔が好きなんて、生まれた時から決まってるもの、そんなの自分自身で作ったものじゃないし・・・最初からあったものを好きって言われても・・なんか寂しい感じがする。」
「そうかな。・・・顔なんて2人として同じものを持つ人間なんていないんだぜ?持って生れてきたものを好きって言ってもらえたほうが、運命的な感じがするけどな。」
・・・・・。
なに?
その説得力のある話。
それに、ちょっとロマンチックなこと言ってるし。
優菜は、年下の男の子のそんな恋愛観に胸がくすぐったくなる。
「そんな風にいわれると考えちゃうけど・・・けどやっぱり中身を好きになってもらいたいなぁ・・って思っちゃうよ。」
「中身ってなんだよ。」
ぼそっととんできたその声は不満そうだ。
「それはさぁ、性格とかだよ。雰囲気とか。」
「性格なんて見えねーじゃん」
「”性格”そのものを見るんじゃなくて、その人の行動とかを見ながら”性格”を見ていくの。この人のこういう考え方好きだなぁ・・とか共感していく訳だよ。」
「なんだかなぁ・・・そういうあいまいなモンなんて見方によってはどうとも取れそうであんまりだな。俺は。」
優菜は、何もない真っ暗な空気の中浮かんでくる言葉を自分の中へと取り込んでいく。
そこから見えてくる彼の考え方がとてもユニークに思えて、どんどん惹かれて行く自分が居た。
彼との会話が・・・楽しい。
反論、されてるけど。