第3章 引力
「雨の中で渡されたの?」
「いや、下駄箱に入ってた。」
下駄箱にラブレター。
漫画にありそうな話だけれど、実際そんなことあるんだ。と驚く。
もちろんそんなもの私はもらったことはないから本当のところはどうなのか知らないけれど・・・。
「何も読めないの?」
「何もっていうよりかは、一行だけしか書かれてないんだ。後半の待ってますってのだけはどうにか読めた。あと差出人の名前。」
待ってますなんて言葉を聞いて、想いを寄せてる女の子の姿を想像してしまう。
クラスの女の子たちのようにキャーキャーいう声は出なくとも、自分の中で少しずつテンションが上がっていくのが分かる。
「なんか私、どきどきしてきちゃった。」
「なんで?実際の手紙見ると、黒いインクがにじんでる中に待ってますの文字だけ浮かんでるみたいで結構ホラーだよ。そういう意味なら俺もどきどきするけど」
暗闇の彼はかなり白けてる。
「そんなこと言わないの。自分の事好きになってくれてる人が居るなんて想像するとドキドキするじゃん。」
「・・・・・いや。来てまだ一カ月で告白されてもなぁ。・・・・俺の何がいいのか分かんねぇし。」
「それは・・・確かに。顔が好きです!とか言われたら言われたで少し考えちゃうかな・・。」
だって、顔がタイプなんて・・・自分の顔より可愛い人を見つけたらきっとそっちに行っちゃうでしょ?
・・・そんなの寂しすぎる。
優菜は自分の事のように真剣に考え始める。
ラジオのお悩み相談なども、自分の事のように置き換えて考えてみるのが好きだった。
実際そんなことが起こったらどうだろう、と、相談者の気持ちを想像して理解しようとすると努めると、何となくだが見えない相手を近くに感じてくる。
たまには深入りしすぎて胸が痛む事もあるが、
そうして自分の心が動くのが気持ちよかった。
もちろん、ラジオの時には一方的だったが今回は考えたことを伝えられる相手が居る。
「俺は逆に顔が好きって言われたらそれはそれで分かり易くていいかな。」
「えっ?」
思わぬ反対意見に優菜は右側を向く。
もちろんそこには何も見えないのだけれど。