第3章 引力
「星なんてフツー雲の上にあるものだろ?だから雨なんて関係ねぇと思ってた。」
優菜はくすくすと笑う。
男の子はなかなか現実的な考えをお持ちのようだ。
「だって、おとぎ話だもん。」
「そのセリフをお前が言うなよ。」
そう言うとお互い笑いあう。
2日目にして和やかな心地のいい空気だった。
「なんでそんなに現実的なのに、おとぎ話なんて調べてくれたの?」
疑問に感じたまま聞いてみる。
暗闇はしばらく考えて、
「優菜の世界に触れてみようと思ったんだ。」
と静かに答えた。
その言葉に、優菜の胸は音を立てる。
トクン・・と脈打つ心臓の音がやけに大きくて焦る。
「・・・嬉しい。」
小さく小さく呟いて、
気付かれぬよう、そっと胸を抑えた。
誰にも見向きもされずに、自身さえも捨てたくなっていた価値観だった。
今、それに触れようとしてくれている人が居る。
素直に、嬉しい。
「格好いいこというんだね。」
と、優菜は照れ隠しに今度は聞こえるよう言葉を暗闇に投げた。