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幸福な恋におちている

第1章 碧に吸い込まれる


ㅤその細い身体の何処に吸収されているというのか、流石は成長期と言うべきか、ルイ君は見掛けによらず意外と食べる。

ㅤお気に召したらしいたこ焼きは、結局私が全部食べていいよと言ったので、ルイ君は幸せそうにたこ焼きを全て平らげた。



(……この笑顔は本当、癖になるなぁ)



ㅤ焼きそばも数口与えて、頬張るルイ君を眺める。

ㅤ自然と口角が上がり、僅かに胸の辺りが暖かくなる様な感覚に、これが餌付けか、と脳内で一人ごちる。

ㅤそんな私に、ルイ君が嬉しそうな声音で声を掛けた。



「お祭りって凄いですね! 美味しい物が沢山あります!」
「まだ食べられそう?」
「全然余裕です!」
「ははっ、頼もしいなぁ。私ベビーカステラも食べたいんだ。後でそれも分けっこしよう」
「はい! ……ふふっ」



ㅤ僅かに出来た間の後に、急にルイ君が小さく笑い出した。

ㅤ疑問に思った私は、小首を傾げながら尋ねる。



「ん? どうかした?」
「いえ……今でもすっごく楽しいのに、まだまだこの楽しいのが続くんだなって思ったら……へへっ、なんだかニヤニヤしちゃって」



ㅤルイ君は気持ちが高揚しているのか、頬を僅かに染めながら碧の双眸で此方を見詰める。

ㅤその笑みに魅せられ早くなる鼓動に、心臓をグッと鷲掴まれた様な感覚に陥る。
ㅤ私は結局何も言えなくなって、小さく微笑む事でしかその言葉に応える方法を思い付かなかった。



◇◇◇



ㅤ腹ごしらえも終わり、もう一度手を繋ぎ直して再度露店を巡る。

ㅤヨーヨー釣りと金魚すくいの出店を視界の端で捉えて、まずはどちらから行こうかと思案する。

ㅤしかし繋いでいた手を軽い力でクイッと引かれた事に気付き、後ろを振り返ると、ルイ君はチョコバナナを売っている出店の方を興味津々に眺めていた。



「気になる?」



ㅤ私がそう問い掛けると、キラキラした目で此方を見上げ何度も縦に振るので、方向転換してチョコバナナを一つ買った。

ㅤバナナとチョコレートという、シンプルで分かり易い味だが、見た目も派手で味も間違いない。

ㅤそれもルイ君は満足げにペロリと平らげて、今度こそ私達はヨーヨー釣りと金魚すくいがある方へ向かった。

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