第1章 碧に吸い込まれる
ㅤルイ君の視線がチラチラとお互いの浴衣を見比べていたので、私は我慢出来ずに笑みを溢して、ルイ君が思い浮かべているであろう気持ちを代弁する。
「ふふっ、浴衣、お揃いだね」
「へへっ、ですね」
ㅤルイ君は頬を仄かに赤く染めて、照れた様に笑みを浮かべる。
(はぁ~……ルイ君の笑顔が身体に染み渡る…可愛い……)
ㅤこの笑顔の為なら、何だって出来てしまうと錯覚させる程に、気が付けばルイ君の笑顔は私にとって特別な物になっていた。
(っと、いけない)
ㅤ数秒間二人で微笑みあっていたが、この場合は正気に戻ったと言うべきか、先に気付いた私の方から話し掛ける。
「それじゃあ、行こうか」
「っはい!」
ㅤルイ君の大きな返事を合図に、私達は祭り会場に向かうべく歩き出した。
◇◇◇
ㅤルイ君と話ながら歩いていると時間はあっという間に過ぎて行き、気が付くと私達と同様、祭り会場に向かうであろう浴衣を身に纏った人達がぞろぞろと視界に入ってくる。
「もう結構混んでるなぁ」
「ですねぇ」
ㅤ私の言葉に同意を示したルイ君だったが、その表情は輝いていた。
ㅤこれから人混みの中に入る事を想像して、少しばかり気持ちが疲弊していた私だったが、ルイ君のその表情を見ただけで、直ぐ様その感情は霧散していく。
(我ながら現金だと思うけど、でも……)
ㅤ今日はこんな幸せそうなルイ君が沢山見れるのか……
──そう思うと、私も心が踊り期待に胸を膨らませた。
◇◇◇
「……凄い人の数だねぇ」
「そうですね……」
ㅤルイ君と二人、あまりの人の数に圧倒されながら辺りを見回す。
ㅤ建ち並ぶ出店に笑顔で並ぶ人達は、皆総じて笑顔に溢れていた。
「はぐれない様にしないとね」
ㅤルイ君は勿論、私自身もそれほど長身な方ではないので、この人混みの中に入ってしまったら、直ぐにはぐれてしまうだろう。
ㅤしかし祭りの数日前に、はぐれた場合の集合場所を前もって決めていたので、その心配は問題無いだろうという結論に至る。
「……」
「ルイ君?」
ㅤルイ君の顔を見ると、頬を赤く染めて何かを言いたそうに口をモゴモゴと動かしていた。