第1章 碧に吸い込まれる
ㅤ不思議そうに目を瞠って、私の言葉を鸚鵡返しするルイ君に、私は僅かに微笑み大きく頷いた。
「……誰にも迷惑をかけたくないっていうルイ君の心根の優しさも勿論素敵だと思うんだけど、友達ってそういう事だけじゃないと思うんだよね」
「……友達、」
ㅤ初めて会ったあの日の様に、ルイ君は友達という言葉をゆっくり噛み締める。
ㅤそんなルイ君の碧い目から視線を逸らす事無く、私は告げた。
(……私が今、本当に伝えたい事……、)
「……次はさ、ルイ君が幸せになる番じゃないかな?」
「……!」
「今まで押し殺してきた自分の気持ち、本当にしたい事、見たい物。全部全部、諦める必要なんて無いんだよ」
(どうか私の想いが、少しでも届いてくれたら……)
「ねぇ、ルイ君……。今一番、ルイ君が求めてる物は何?」
(……貴方が前に進める手助けが出来たなら、)
「……僕が求めてる物は……、」
(私はそれだけで、報われるから……)
「……貴女と、友達になりたい」
──…ルイ君の口から発せられた言葉に、私は幼子の様に声をあげて泣いてしまいそうになるのを耐える為、奥歯を強く噛み締めた。
◇◇◇
──…数ヶ月後。
「そっか~。明日からもう夏休みか~」
ㅤソファーに深く腰掛けながら、間延びした声で隣に座るルイ君に話し掛ける。
「早いな~……ルイ君とこは旅行とか行くの?」
「はい。毎年この時期は両親も休みを取ってくれるので、海外に……」
「へぇ~! 凄いなぁ」
「あの! ……それで一つ提案が、」
ㅤルイ君は少し頬を染めながら、しかしハッキリと告げた。
「は、花火大会、一緒に行きませんか…」
「えっ、私と?」
ㅤ予想だにしなかったルイ君の言葉に、思わずポロっと出てしまった私の呟きを、ルイ君は聞き逃す事無く大きく頷いた。
「っはい、ど、どうですか……?」
ㅤおずおずと言葉を待つルイ君に私は応える。
「……私は勿論いいんだけど、まずはルイ君のご両親に許可を取らないと、」
「そ、その事なら大丈夫です! 二人にはもう許可は取ってあります!」
「……そ、そうなの?」
ㅤその用意周到さに僅かばかりたじろぐ私だったが、もう一つ気になる事を問い掛ける。