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幸福な恋におちている

第1章 碧に吸い込まれる


「……ふっ、くッ、……うぅ、」
「……私、今の今まで自分の役割が何なのかいまいち理解して無かったんだけど、今日漸く分かった気がするよ」
「……?」



ㅤルイ君はチラリと潤んだ目で私の方を一瞥したが、この心情は口に出さず自分の中だけに留めようと決めて、僅かに微笑むだけに抑えた。



(……そう、きっと私は、)



──例えるならば、上手な息の仕方を忘れてしまったルイ君に、呼吸の方法を思い出させてあげるような、きっとそういう役割なんだ。



「……前に私が見送りを忘れて、ルイ君が探しに来てくれた時の事覚えてる?」
「……?……はぃ……、」



ㅤ私の質問の意図をうまく飲み込めない様子のルイ君は、疑問符を浮かべながらも応じてくれた。



「あの時、私すっごく嬉しかったんだ……。少し言い方はあれなんだけど、漸く我儘になってくれたというか……。本当は言葉にしづらいだけで、ルイ君とって私の存在がストレスになってるじゃないかってずっと思ってて……」
「そんな事ッ……!」
「勿論今はそんな事思ってないよ! ……でもその時はね、私も初めての事ばっかりで、どうしたらいいか解らなくて、少し気が滅入ってたんだ」



ㅤルイ君と出会った日から、今こうやって対面して話せるようになるまで、実はあまり月日は経っていないのだが、まるで遠い昔の様な出来事のように思う。

ㅤ当時の事を想起しながら話始めて、区切りの良い所で一呼吸置こうとしたが、ルイ君が私の紡ぐ言葉を聞き逃さないようにと、無意識なのか、僅かに前のめりになりながら続きを促すので、微笑ましく思いながら、あまり時間を置かずに言葉を続けた。



「でも……少しずつルイ君が心を開いてくれて、あの日、私がお見送りを忘れて、ルイ君ちょっとムッとしてたでしょ?」
「……えっ!? 僕そんな事してました!? すみません! すみません!」



ㅤ私の言葉を聞いたルイ君は、申し訳なさそうに何度も謝罪し頭を下げてきた。

ㅤ再度泣き出してしまうのではないかという位の必死なその様子に、私は気にしていないという意味も込めて、大袈裟に笑ってみせた。



「あははっ! やっぱり無意識だったんだ。…謝らなくて良いよ。寧ろそれが嬉しかったって話」
「……嬉しかった?」


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