第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
シモン―第二層フィールドにて私達が助けたカミナに近しい少年
何故彼がここに?
ボス戦参加者は部隊振り分けの為、必ず会議に参加している
しかし、そこに彼や彼の知り合いの姿は無かった筈だ
しかも今の彼は私達が唯一知っていた状態とは程遠い
何か見違えた、というか覚悟を決めた顔だ
「…やっぱり最初からいたのか。ボス部屋に入る時にぶつかってきたのが会議にいない人で、君くらいの身長だったからまさかとは思ったけど」
部長援護に辿り着いたユウがシモンを背に口を開く
つまり、ここに入る時に無理矢理自分達を列に捩じ込んだという事だろうか
何て無茶苦茶な…
しかし、確かに誰かと接触した記憶がある
でも彼とは身長が違う気が…
「なに、一人じゃないさ…なぁ、皆!!」
直後、どこからともなくプレイヤーが現れた
多少エキセントリックな格好ではあるが、大体見た顔だ
第二層の街でシモンの知り合いを探した際に集まったプレイヤー達―全員、何も心配ないという顔をしている
「後は…任せてくれ」
シモンを先頭にエキセントリックな集団が私達の前に出る
ボスはもう体勢を直して私達の前に壁の如く立ちはだかっている
「任せろって大丈夫なのかよ!?」
部長が後ろからシモンへ声を投げ掛ける
その言葉に対してシモンはこちらを見なかった
背中だけしか向けなかったが、答えは大きく、そして簡単になされた
「俺を…俺達を…」
「「「「誰だと思っていやがる!!」」」」
シモンを囲む集団がその言葉を端にボスへ向かった
シモンはゴーグルを目の辺りに下げた
「いや、誰だと思ってるとかじゃなくて!どうするとかそういうのは!!」
部長がシモンに詰め寄る
部長の中にはまだ第二層で出会った時のがあるのでは…と懸念しているようだ
シモンはこれに対して、部長をしっかりと見据えながら答えた
「ドリルは一回転すれば一回進む。もう一回転すれば、もう一回進む。そうして進む事を止めなければいつまでも進める。そうして進んだ先に天を越える…進むには俺が生きる事を止めても自棄になってもいけないし、アニキに恥じない俺は生き続けて見せてやるさ!!」
つまり…?
「ドリルが出来るのは…進む事だ!!」
そう言ってシモンはコンクリートの地面を急速に掘り、彼は地中に消えていった