第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
別のビルの影に移動し、ボスをより近くに確認した
距離としてはまだ少し遠い気がしなくもないが、やるなら今しかないだろう
「…皆」
部長が静かに口を開いた
しかし、目線はボス一点
「行くぞぉぉ!!」
掛け声と共に駆ける
脚力ブーストがかかった中、始めに出るのは―私
舗装された道路の上を七人の中で誰よりも速く前に出た
右腕が振るわれるが、ジグザグに走り回避
「邪魔!!」
地面近い右腕をミヤが払い、開いた空間をシンジ先輩が通る
ミヤは直後に左直角に回避し、視線から外れる
シンジ先輩はそのまま足を斬り、ボスのターゲットとなる
「相手はそっちじゃない」
エリーはその間に近くの植木から跳ぶ
武装は構えていないが一点、左手のチャクラムが射出されている
その先を持っているのは―ケンタ
「行ってらっ…しゃい!!」
そのまま空中でチャクラムを引き寄せつつ反時計回り
ケンタを思いっきり引っ張り、ボスへ投げつける
「おうよ!!」
投げられたケンタはボスよりも高い位置へ
そこからは簡単だ
「かまして…やらぁ!!」
武器スキルと重力を伴った攻撃
左の肩口に当たったそれは大きくボスを揺らがせた
「ケンへの追撃は、させないよ」
直後、ユウからボス左膝へ、植木から跳んだ私から右腕へ武器スキルを伴う攻撃が入る
ボスは右腕が変な方向を向き、膝から揺らぎ大きく体勢を崩す
「キョウヤ!!」
シンジ先輩がボスを挟んだ向こうの部長へ叫ぶ
今がチャンス―隙を作ったボスの胸へ部長が跳び、槍を投げる
これで決まり―
そう思った直後、槍が消えた
「な!?」
どういう事だと思ったがすぐに答えは見付かった
右腕、掌が上を向いている
つまり、槍に向かってストライクパイルを放ったという事である
予想外の事態に誰もが止まる
故に最も危険な位置にいる部長への援護にすぐに入れなかった
ボスの左腕が部長に迫る
絶体絶命―その瞬間
「させねぇぇぇぇぇ!!」
横から部長を拐う一つの影
地上に降り立ったその影は、つい最近私達の見た人物であった
小柄な身体に不釣り合いに大きなゴーグル、そしてドリルを携えたシモンであった