第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
「エリー!!」
ボスに構わず、私はエリーの元へ駆け出した
瓦礫のお陰で少し走り辛いが、そんな事は気にしていられなかった
ボスの背面―その位置で着地を試みるエリーを受け止め、そのまま感情のままに抱き締める
ゲーム内でありながら、彼女の身体は現実と同じように血の通った暖かさを有しており、それが私を安心させた
しかし当のエリーは即座に私の腕からすり抜けると、武器を構えボスに向かう姿勢を取ったのである
「今はボス戦」
この一言が私をハッとさせた
エリーの言う通り今はボス戦の最中である
そんな中で先の様な行動をしていたら、それは格好の的となる
事実、ボスはこちらを向こうとしている
事態は今、重いのだ―それを改めて認識させられ、内心反省していた所エリーは更に続けた
「だから…さっきのはまた後でお願い」
「え?…あぁ、うん」
予想外の言葉に私は中途半端に肯定するしか出来なかった
背中しか私に向けていない彼女の表情は、今は知る事は出来ない
だが、少しだけ闘気というかやる気に溢れた感じがする
何だか妙な約束をこぎつけた気がするが、まぁ良いだろう
お陰で緊張が少し解れたのを感じつつ、改めて剣を抜き、ボスへ向かうのであった