第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
何処かで低い音が響いた
全員が武器を構え、警戒する
(…何処から?)
これが私達の直下ならば前回の二の舞だ
多少心構えがある程度で、対策は無いに等しい
故に、上空と地下―この二つを警戒していたが、結果は更に違うものだった
遠くから低い音、しかし先程よりも大きく響いた音は住宅地の更に向こうから聞こえた
斜面に造られた住宅地の向こうには日に照らされ、光輝く海だか湖がある―多分海だ
そこに一つ直立二足の影があった
ボスだ
それもあんなに遠くに現れるとは…
更にボスは直立しているだけで動かない、私達が来るのを待っているのか
そうなると一つ仮説が浮かぶ―このステージは、かなり広いのでは?
50人近いプレイヤーが一斉に住宅地の方向へ駆ける
走っている中、仮説が確信に変わる
やっぱりここは、広い―それもちょっとした村とか町くらいはある
小さな相手ではない事を感謝しつつ、住宅地の坂道を駆け抜ける
ここを抜けると海に面した通りだ
この位置からでもギミックの戦車が見える辺り、車が平気で行き来するような通りだろう
しかし、先頭のセガール指揮する部隊が停止し全軍が停止した
どうやら海近くでは戦わず、住宅地の端近くで戦うつもりらしい
ボスもそのつもりか、海に浸かっている体をフワフワと浮かばせ、道路に着地した
黒い身体、腕には三本の爪、顔に相当する部分に何かの骨を付け、胸に赤いクリスタルを持つ第三層のボス―サキエルが私達の目の前に全貌を現した