第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
第三層―
中心となる街、ゴオラはこれまでとは違う雰囲気であった
一言で言うなら、日本の夏である
街の中央はビルが立ち並ぶが、少し離れれば住宅街が広がっている
自分達がコスプレしたまま帰ってきたかのような勘違いが発生しがちだが、現実に帰った訳ではなかった
手を軽く振ればメニューは相変わらず出てくるし、同じ事しか言わないNPCもいる
ここは確実にゲームの中なのだ
非常に個人的だがこの層、日射しが強く暑い
現実の身体に影響はないとは言え気分は最悪である
だからこそ、積極的に戦闘を行い気を紛らわしているのだ
今私達のいる第三層フィールドは、廃ビルが立ち並び、それらの内部を探索するという事形式になっている
幸い、廃ビルの中は殆ど屋内なので日に晒されているよりかは幾分かマシだった
尤も、湿気があるので暑さが身体にまとわりついている状況に変わりはないのだが…
フードの下、顔を伝う汗を拭いつつ先へと進む
そういえば…第二層の時にであったあの少年―確かシモンと言った筈―はどうしているだろうか
身近な人が死んだ事が故に、行き場のないどうしょうもない怒りを発散するしかなかった彼…
あの時は考えてはいなかったが、もしそれが自分であったらどうなっているのだろう―
「皆、そろそろネームドのいるエリアだ。見た目は単なるデカい蜘蛛だけど、油断は禁物だ。気を抜かずにいこう」
部長の言が聞こえ、考えを払う
それに…我ながら不吉な事を考えていたものだ
そもそも、そうならないように私達は今、リスクを承知で生き抜こうとしているのだ