第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
シモンは部屋で一人、考えていた
自分は結局どうしたいのか
仮に敵を倒したとて、また敵は現れる
しかし、カミナは甦らない
終わりのない仇討ち、得られない結果―それを理解してしまったが故に、どうすれば良いかが分からなくなってしまった
カミナの事を思い出す
彼は生前、現実にいる時から多少破天荒なノリであったが、同時にバイタリティに溢れた人物でもあった
故に方法はともかく、彼は様々な問題をクリアしてきた―お前の信じる俺を信じろ、とシモンに言い続けて―
しかし、カミナは一層ボスの前に呆気なく死んだ
自分の慕う兄貴分がいなくなり、自分はどう生きれば良いのか
考えても分からない
「アニキ…俺は、どうすれば…」
口を吐く言葉
この言葉に答えを与えていた者はいない
だが―
「シモンはどうしたいのですか?」
扉の方からの声
見るとニアがいた
最近は彼女に対する突っぱねも少なくはなっているが、シモンは彼女の投げ掛ける疑問に更に頭を悩ます事もしばしばあった
「アニキさんが何を望むか、ではなくシモンが何を望むか。私はそこが、知りたいです」
柔和な笑顔で投げ掛けられる質問はシモンにとっては相変わらず難しい
だが凄く単純でもある気がする、答えられる筈だ
故に、彼は心と頭を落ち着かせ自分が何を望むか―自身の深層を探る
「……分からない」
ややあってシモンは答える
答えは「分からない」
「何か目標があって、この世界に来た訳でもない。俺はアニキに着いて行きたかっただけだから。でももうアニキはいない。だからせめて俺に出来るのは精一杯命を尽くして、生きていくしかない。いや、生きていたい」
願い無く、追うだけだった背中は最早無い
故にこれが、この世界での彼の始めての願い
「多分、死のうと思えば簡単に死ねるんだ。でもそれでアニキに会ったって…何か、恥ずかしいし。だったらせめて、死ぬんでも精一杯やってから死にたい」
この答えに、ニアは変わらない柔和な微笑みを浮かべている
「それが、シモンの望みですか?」
ややあってから開かれた彼女の言
これにシモンは―
「あぁ」
迷わず、真っ直ぐに答えを返した