第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
全員、不覚である
ボスが現れた位置により部隊が二つに分けられてしまった
会議で話した事の意味を無くさせる中央出陣
してやられた―誰にもそんな感覚があるが、それを口にする余裕があるなら迎撃しろ、という話になる
「順番変更だ!目の前の奴等、頼むぞ!!」
目の前の奴等―つまり私達七人に向けられたセガールの言葉には口では答えずとも応えるつもりだ
「チッ…にゃろう!!」
始めに飛び出したのはケンタ、そして部長
後ろ足一本で器用に立つボスの前足攻撃を正面から受け止める
何はともあれ、私達七人の中の手筈には狂いはないようだ
しかし、緩慢な筈のボスは思いの外次の動作に入った
鳥っぽい頭…つまり嘴によるつつきである
狙いは―ケンタ
「うぉい、マジか!」
動作入りの速さに驚くケンタ
隣の部長も抑えている為、すぐには動けないが―
「後ろはちゃんとしてるから安心しなよ、ケン」
割り込んだユウが盾の武器スキルを発動させ、すんでの所でダメージを防いだ
それも束の間、ボスは既に次の動作に入っていた
前足二本を鍔迫り合い状態から剥がし、上体を上げた
大きな「Y」に見えるボスの次の動作は、そのまま重力任せに倒れこむ―要するに、のしかかりである
「駄目だ、範囲外に出る!!」
部長の一言を皮切りに三人が手前に来る
直後、大地が唸った
舞い散る土埃の中、視界を奪われまいと目を守る
(全く好き勝手…)
当然なのだが、心の内でボヤかずにはいられなかった
土埃が少し晴れた先、ボスは倒れたままの輪郭を晒している
「そのまま変わるなよ!!」
次に飛び出すのはシンジ先輩
狙うは後ろ足、既に起き上がり動作に入っていたボスに対して先輩は頭を飛び越えるという選択をした
急に高さを増すシンジ先輩の位置
しかし、これに対して先輩は動じなかった
このタイミングで先輩は武器スキルを発動、後ろ足を上から下まで斬りつけた