第4章 第1層~第10層 その3 "再起"
斬られたボスは大きく怯み、悶えた
なるほど弱点はそのまま―ならば、どうにかなる筈
次に出るのは私とミヤだ
ボスの前足と頭を避けて、内側から打ち上げる
その手順を頭に浮かべた時に左肩につつかれた感覚を感じた
ダメージにならない、気付きの為のつつき
攻め入る直前に気を紛らわされ、思わずそちらを振り向くと―
「………」
―ムゥがいた
二層フィールドに数多くいたのと変わらぬ姿で、自分が気付かせたと言いたげに手を自身の顔に向けている
反応が出来なかった、言葉も当然無かった
(なんで、いるの!?)
言葉に出なかった疑問を解消する前に、目の前のムゥは横殴りに吹き飛び、散っていった
吹き飛ぶ方向と逆―そこにはエリーがいた
どうやら無言で矢を放ったらしい
「多分アレ、取り巻き」
取り巻き―つまりボス以外の敵がいると
また情報外の情報だ
しかし、事実として私の目の前に現れ、今も数匹現れセガール各部隊が各々対応している
「また出てきたら私がどうにかする。だからリリィは手筈通り」
後ろから来る奴等は対処すると…ありがたさを胸にミヤに続く
もう一度、狙いと意識をボスに向け、駆ける
「最初は私がやるから、リィちゃん二撃目ヨロシク!」
その一言を皮切りにミヤが私よりも前に出る
当然、ボスは既にミヤに狙いを定めているが、それを許す訳にはいかない
故に―
「こういうの、間に合わせるのが!!」
右の前足をユウが盾で―
「………」
左の前足をムゥに対処しながらのエリーが弓矢で抑える
続くボスの嘴
ミヤも私も後には退けない
「ナメんな!!」
だから前へスライディング
現実では脚の皮が大変な事になっているであろう距離を滑り、ミヤがボスの懐へ、そして―
「こりゃどうだ!!」
武器スキルを彼女の頭上へ叩き込んでいった