第32章 第51層~第60層 その4 "希望への第一歩"
一人戦線から離れたトーマ
既に誰もいない建物の屋上へ辿り着いていた
目的の物は目の前
航空機の発射台――カタパルトである
彼の考え――それはボスの死角になりうるであろう距離から一気に飛び込みバリアを破る
作戦と彼は言ったが彼自身、思い返すとその表現が合っているのかは分からない
(ま、んなもんどうでもいいか)
言葉の整合性等彼にはどうでも良い
彼にとって重要な事はボスのバリアを破り、ボスを叩き潰す事
それ以外に無い
遠目に見える戦闘
向こうはどうやら未だにバリアを破れていないようだ
よくもまぁ頑張ってくれて、とも思いながらカタパルトに足を掛ける
後はタイミングと位置だけを気にすれば良い
カタパルトから射出された後は基本的に真っ直ぐにしか進めない
無理矢理に軌道修正する事も出来なくはないが、そうするとボスに勘づかれる
だからこその一撃勝負
(良いねぇ…こういうのも悪くない)
普段彼が自ら飛び込む前線とはまた違った緊張感――スリルが彼を興奮させる
カタパルトに左足を無理矢理に組み付け、もう一度前線を見る
彼の仲間が奮闘しているのだろう
見事に彼が射出される軸線上にボスが来ていた
「やるねぇ。なら……俺も行こうかよォ‼」
吼えると同時に右足を踏み抜き、彼の身体は加速しながら空へ投げ出された