第32章 第51層~第60層 その4 "希望への第一歩"
飛び込んだ先、相変わらず戦闘は続いていた
適宜、縄を放ち動きを阻害させながら攻める
しかし、簡単に縄は破られる上、攻撃はバリアで防がれる
更には格闘と火の玉により戦線が簡単に崩される
「ごめん、皆大丈夫?」
「一応な。ってかアイツどこ行ったんだよ?」
アイツ――つまりトーマの事だろう
今まで上手い具合を保っていたのも奴が囮になっていたからだ
「何か作戦があるとか言い出して向こう行ったけど」
「だからかよ!こりゃ酷ぇ訳だ」
言いたい事は分かる
普段も大概そうだがあの馬鹿は余りにも好き勝手している
とは言えこちらも勝手に利用しているのだから本来はどっちもどっちなのだが、気にする理由はない
「ま、当てにしてもしょうがないでしょ」
言いながら、私は跳躍
そのまま剣を突き上げる
無論ボスのバリアに防がれた
ブーストをかけて更に押し込むが微動だにしない
逆にこのバリアを破るのに何らかの条件が必要なのではないか――そんな風にさえ思える
歪な鍔迫り合いを崩したのはボス
内側からバリアを弾くように解いた
「っ‼」
割れる様に解かれたバリア
その勢いに、私は空中で体勢を崩された
視線の先、ボスが火の玉を放とうとしている
先程と違い、反動を生む物はない
防御してどれだけ防ぐ事が出来るのか――一か八かに懸けるかと思い剣を正面に構えたと同時、ボスの首が急に上へ向いた
直後、放たれる火の玉
ボスの首が上へ向いた事により私へ向かいはしなかった
「ん、間に合った」
着地した先、聞こえた声はエリー
チャクラムと縄付きの矢を組み合わせて、ボスの首の向きを変えていた
「ありがとう、エリー」
直後、ボスが縄を切って火の玉を放つ
ブーストをかけた跳躍で後退――エリーと合流した
「破れそう?」
「まだ分かんない」
「ま、それでも――」
「――やるしかないね」
未だ見えぬ攻略の鍵
それでも諦めずに挑む他なかった