第32章 第51層~第60層 その4 "希望への第一歩"
「ハッハァ‼」
何処からともかく聞きたくもない声が響いた
確認する前に起きたのは閃光
トーマ――あの馬鹿がボスに拳を突き出していた
無論それはバリアに阻まれている
だが――
「クハハハ……アハハハハハハ‼」
――奴は笑っていた
その具合はいつもの倍増しと言って良いかもしれない
「何にビビってんのか知らねぇが、避けられなかったって事はバリアだよなぁ‼」
今更何を言っているとも思ったが、直後誰もがその異変に気付いた
ボスのバリアにヒビが入っている
これまで如何なる攻撃を加えても破れなかったバリア
遂にバリアの耐久がなくなった?
(違う……多分…)
私は直感していた
直前の話があったせいかもしれない
何か特別な、尋常ではない何かがそこにあるのを私は察した
「だからよォ……んなバリア一枚っペラなんざ……俺は知ったことかよォ‼」
吼えると同時に拳を押し込むトーマ
同時にバリアが塵か霞になるように消滅した
「オルァ‼」
そのままの勢いでトーマはボスの顔面に反対の拳を撃ち込んだ
初撃のそれとは違い、確実にダメージを与えている
「ん、トドメ」
そう言ってエリーが矢を放つ
ボスの顔面――丁度トーマのいる位置へ飛んでいった矢は奴の近くで爆発を起こした
火薬付きの矢――そう言えばそんなものもあった
「……なんだこりゃ」
身体の一部を焦がしながら大の字になるトーマを背にVサインのエリー
前にも似たような事があったような気がする――そんな事を思いながら、第六十層はクリアされたのである