第32章 第51層~第60層 その4 "希望への第一歩"
空中にいた馬鹿を蹴りで叩き落とす
反動で私は後ろへ跳躍――ボスの火の玉を回避
助けたつもりはない
フォローのつもりもない
正直嫌がらせに近いがこれなら大丈夫だろう
さて、問題はボスの方だ
今の所破れる気配のないバリアに瞬間移動
硬い身体からの格闘に火の玉
単純に言って隙がない
闇雲に攻めてどうにかなるとは思えない
何らかの攻略法を見出ださなくては――
「カッ、やってくれんじゃねぇか」
「別に。あそこにいたアンタが悪い」
先程私によって叩き落とされたトーマが私の隣に並び立つ
一瞥もくれてやる必要はない
「オイ、もう一発やらせろ」
不意に口を開いたトーマ
普段勝手にやっている癖にわざわざ言う事だろうか
「根拠は?」
一応聞いておく
「あの糞ビビり野郎、バリア張ってから俺だけ逃げやがる……何か臭うんだよな」
偶然の産物にしか思えないが確かに引っ掛かる所はあった
それが何かは分からないが
「で、今度はどうする気?」
故に敢えて乗っておく
気に食わないが状況打開においては必要だ
「アレから俺を飛ばす」
そう言ってトーマが顎で指した物は、このステージにある唯一の建物
ケンタが基地と呼んでいた建物だ
「死角から一直線にぶっ飛べばどうにかなるだろ」
「つまり、今度はこっちが囮って訳」
「ま、そうなるわな」
致し方あるまい
馬鹿の作戦の為に戦力を掻き集めるか
そんな感覚から溜め息が漏れた時――
「待たせたな」
クリス、リアナの元へ行っていたジンの声
そこには取り敢えず無事だった二人もいた