第32章 第51層~第60層 その4 "希望への第一歩"
ブーストを掛けたにも関わらず、攻撃が完全に弾き返された
驚く間も無く、繰り出されたボスの手刀に空中のクリスは呆気なく叩き落とされた
「なっ――」
その勢いは凄まじく、足元のリアナが反応出来ないまま激突した
更にボスは二人がいるであろう場所へ、全力で蹴りを放つ
勢い良く空を駆ける影の塊
見ずとも分かる――クリスとリアナだ
二人はそのままケンタが基地と呼んでいた建物上層階の窓を突き破っていった
「回収に行く」
「お願い」
ジンが短く言い、基地と呼ばれた建物へ向かう
最悪の事態にはなっていないだろう――だが、深刻なダメージの筈
放置しておく訳にはいかない
「で、その昔の特撮とやらじゃどうやって倒してたの?」
「試作の新型爆弾で一発だ。だがそんなもんの持ち合わせが都合良くある訳ねぇよな」
それもそうだ
基本的に重火器の類は私達の武器として存在していない
複数の薬品等を組み合わせれば火薬が出来なくもないが、はっきり言ってマイナーな技術だ
ともなれば攻略の可能性は二つしかない
「ぶち破るか隙を狙っての一点集中――全員、ボスをぶちのめすから各々好きに攻撃して」
号令の直後、後ろにいた他の部隊が突撃
私も剣を抜き、ブーストをかけてダッシュ
ボスの背後に回り、足目掛けて剣を振るう――が呆気なくバリアで防御されてしまった
(チッ――)
心の中で舌打ちしながら、跳躍で僅かに後退
全体を少し見るとどこも似たような感じであった
誰も攻撃の手を緩めてはいないが、ボスのバリアは全く壊れる気配がない
「あの野郎……面倒臭ぇな」
いつの間にか囮の役を辞めたトーマが私の隣に現れていた
何を休んでいるのかと言いたい所だったが、それすら面倒臭い
「破れると思う?」
「普通じゃ無理じゃね?」
意外にも冷静だ
気の向くままではないのが妙に苛立たしい
「だが知るかよ、そんなもん。ぶちのめせば変わんねぇしな」
そう言って再び戦の渦中に飛び込むトーマ
意味不明な自信に私は溜め息を漏らすしかなかった