第32章 第51層~第60層 その4 "希望への第一歩"
ボスの脇へ回ったエリーはチャクラムを放ち、器用に矢を方向転換させた
ボスを回り込むような動きに変わった矢は地上に刺さり、縄がボスへ引っ掛かる形になった
「リリィ」
エリーがこちらへ視線を移す
それだけで私はエリーの意図を察した
「縄の準備が出来た人から構わず撃って。全部エリーが捌くから!」
故に私は後ろにいる部隊へ指示を出す
エリーが矢を捌き、ボスを縛る
そして動けなくなったボスを袋叩きにする
単純かつ強力な攻略法だ
トーマが無闇やたらに攻めているのも相まって、矢を放つという行為を止める存在はいない
次々と放たれる縄付きの矢
別々のタイミングで届くそれらをエリーは難なく纏め、ボスに絡まるように方向転換させていく
次第にエリーが方向転換させた矢が地面に刺さり、複雑に絡み合い、ボスを縛り上げる形となった
「行くよクリス!」
「オッケーリアナ!」
縛り上げられた瞬間にクリスとリアナが駆け出す
クリスは直後に跳躍――ボスの顔面へ
リアナはブーストを掛け、ボスの足元へダッシュした
顔面と足元への同時攻撃――確実にボスの体勢を大きく崩す事が出来る
誰もがそう感じ、次の動きへ備えた瞬間――
ボスが縄を無理矢理に引きちぎった
「だとしても!」
「もう防げないでしょ!」
しかしクリス、リアナの二人共攻撃を繰り出している
今更何かをした所でダメージは必至
ボスが胸の高さまで上げた両手も、そんな足掻きだと誰もが思った
だがそれは、完全な"ハズレ"となる
ボスが行った事――それは黄金の障壁を展開させる事であり、二人の放った攻撃を物の見事に防いでしまった