第32章 第51層~第60層 その4 "希望への第一歩"
何の円盤――その疑問に答えを出す間もなく、円盤が開いた
中から何か来る
身構えた私達の前に、円盤の中身が露になる
青い風船――そう形容するしかないものだった
その風船が急速に膨らみ、膨らみ、膨らみ―――爆炎と共に弾けた
やはり、というべきか
ここからがボス戦だ
煙が晴れ、ボスが姿を現す
その姿は二足歩行する真っ黒な甲虫
胸と口と思われる箇所が暗く光っているだけで、後は異形のゴキブリかカミキリムシを思わせた
現れるボスのHPバー、記される名は"Z-TON"
「ゼットン……マジかよ…。日本特撮史における最強の一角じゃねぇか」
ケンタの解説を聞き流しながら、対処法を巡らす
その間、前に出たのはトーマだった
「関係ねぇな。最強だろうが何だろうが、俺を楽しませなきゃ三流も良いとこだよなぁ‼」
素早く跳躍したトーマは、そのままボスの腹へ拳を撃ち込んだ
直撃――しかしボスは全く揺らがなかった
「ハッ、硬いだけが取り柄かよ‼」
そう言って次にブーストをかけた拳を撃ち込む
相当の防御力か体力か――またもボスは揺らがない
「エリー」
「何?」
馬鹿が一人で大立ち回りしている間にエリーを呼ぶ
ああいう馬鹿がいるお陰で割りと落ち着いて次の行動を練る事が出来る
「縄か何かで動かせないやり方でどう?」
「ん、やってみる」
そう言ってエリーは弓を構えた
矢には精巧な作りの縄が括られていた
そのままエリーは矢を放つ
直後にブーストをかけてボスの脇へ回った