第32章 第51層~第60層 その4 "希望への第一歩"
私達があの白い服の男――どうやらダグバというらしい――彼と一戦交えてから状況が変わりつつあるのを感じていた
その現象としてPKの増加が挙げられた
その勢いはまるで競うようだと思えるレベルであり、各地での報告が相次いだ
またそれに便乗するかのように、NPCにも変化が起きていた
人を殺すNPC――AIの不具合かはたまた定められた変化なのか、真偽は分からないが実害は出ていた
当然大きなギルドはそれに対応せざるを得なくなる
シモン率いる紅蓮団はNPCを、セガール率いる深海凄艦はPKプレイヤーの調査と対応に出た
だが、攻略も忘れてはならない
現実に帰る唯一の手段だからだ
だが、二大ギルドは対応に追われている
そうなると自然と残りはどうなるか決まってくる訳で――つまり、面倒な事に私達がボス戦を率いる形となったのである
何度も思うのだが私達――いや、私には率いる力はほぼない
出来ても私達7人分が精一杯だ
「大丈夫、私達なら」
隣のエリーが支えるように呟いた
その通りだ
私達なら大丈夫――"私達"なら
言い聞かせるように扉を開き、光の中へ進む
次に見えた景色は開けた場所だった
森だった所を切り開いたような、そんな広さの場所
建物が一棟建っており、それが唯一高さのあるものだった
「アレって……科特隊の基地じゃね?」
建物を見たケンタが呟いた
とは言え、私には何の事だかさっぱりである
敵が何処から来るか――注視すべき点はそこであり、ツッコミを入れる必要もないだろう
そう判断した矢先――
「……来たな」
トーマが呟いた
苛立たしいが勘は働く奴――呟きの直後、私達の目の前に光が瞬いた
一瞬の眩しさの後、そこにはそれまでなかった円盤が姿を見せていた