第32章 第51層~第60層 その4 "希望への第一歩"
夢を見た―――
また、あの黄昏の中に私はいた
随分久しぶりな気がする
だが、前に見た時から全く時が進んでいないようにも感じる
再び私は歩き出す
彼女―――『 』が未だ囚われているギロチンの元へ
だが、今は何か違った
彼女とは別の気配、深淵に近付いているような感覚すら覚える
そしてその感覚は、歩みを進める度に深まり、彼女の姿が見える頃には、その感覚が最高潮を迎えていた
彼女の元――そこに"それ"がいる
深すぎる深淵、大き過ぎる存在感に私は"それ"の全容を捉える事が出来ない
そして私に向けられた視線に、私は動けなくなった
まるで蛇に睨まれた何とやら―――しかし、それこそが私に深淵の正体を知るヒントになるような気がした
だからこそ、逃げない
対峙してこそ意味がある
決意にも似た思いの中―――再び意識が遠ざかる
そしてこの時、初めて私は気付いた
もう一つの気配
何となく、その気配を知っている事を――