第31章 第51層~第60層 その3 "白い悪魔"
若干周囲の目を感じながら私はオリジナルセブンの拠点へ戻った
拾ってきただの何だの言われたが取り敢えず少女が意識を取り戻すのを待った
その程度なら良かった、その程度なら――
頭を抱えたくなったのは少女が意識を取り戻した今現在の方だ
「この、白い奴‼ 仇を取ってやる‼」
この少女、一言で言って五月蠅い
こんなに直情型な人は始めてだ、頭が痛くなる
ついでに言うなら――
「さっきからピーチクパーチク喚いてると思ったら……お前何、もしかして喰ったのかよ! こりゃ面白いぜ、同類!」
トーマの馬鹿が一々煽る
そもそも無い事を誇張して言うものだから腹が立つ
「黙れ。だから私は何の事か分かんないって言ってるでしょ」
「クハハッ、喰った奴も覚えてねぇのか。外道だねぇ」
もういい
これ以上馬鹿に付き合うと話が拗れる
「クソッタレ‼ 私なんざ眼中に無いってか! 上等だ! 仲間全員ぶっ倒してから白い奴、アンタも倒してやる!」
この少女にもイラついてきた
一々私を"白い奴"と呼ぶ
馬鹿に無駄絡みされた八つ当たりも兼ねて、私は唐突に少女の顔の真横にある壁を蹴り込んだ
無駄に大きな音が響き、一瞬で少女が黙る
「あのさぁ…散々白い白い言ってるけど、私のコレは地なの。現実じゃ割りとそのお陰で苦労してるの。分かる?」
視線は少女から外さない
今まで喚かれていたが、漸く私が主導権を握れた気がする
「さて、じゃあやっと私は話を聞ける訳だけど――」
そこで私は喋るのを止めた
目の前で縛られている少女の瞳が潤んでいる
いや、目元から零れた
「………」
唇を固く噛みしめ、必死に耐えているようにも見えた
今度は黙りか、と疑った時――
「五月蠅いぞ、もう少し静かにやれ」
――ジンが拠点の二階から降りてきた