第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
「あ? どういう事だっての?」
誰も分かる疑問ではあるが答えは分からない
周囲を見回しても霧がかかった平地であった
つまり、敵は完全に姿を消した
そんな事は皆分かっている
故にその場で周囲を探る――何処からか、再び現れる
そう思った直後、紙が舞い擦れる音が響いた
「来るか!?」
瞬間、ジンが両手剣を彼の後ろへ振り抜いた
黒く丸い影――しかしこちらからも分かる手応えの無さで再びボスは消えた
どうなっている? 攻撃は当たっていない?
何故、何がトリガー――浮かぶ疑問は多々あった
だがそれを考える暇もなく空が光った
光は強くない、鈍い――だが数がある
「何か来てるじゃねぇか‼」
その正体に気付いたケンタが叫ぶ
アレは間違いない、隕石だ
実際の大きさはそうでなくとも地上にぶつかった時に発生する衝撃はとんでもないものだ
「リアナ、リアナ。何かスッゴいの来たよ」
「分かってんならさっさと逃げるよ‼」
クリスの手を引いて退避するリアナに続くように私も退避――直後、隕石が降り注いだ
爆音が響き、轟音が弾ける
位置もランダムか、適当に降り注ぐのか退避が精一杯だ
近づく事も儘ならない
「っ‼」
隕石を同じく回避しているエリーが側転しながら矢を放った
真っ直ぐに進むそれは巧みに隕石の合間をすり抜け、ボスの目前へ
だがボスは矢が到達する前に再び姿を消した
同時に隕石がピタリと止む
いなければ攻撃はされないが、こちらもどうにも出来ない
霧が生む湿気にジメジメした感覚を感じる
人を焦らせる感じだ
「こういう場合は――」
進展しない状況の中始めに動いたのはトーマだった
「――ここに決まってるよなぁ‼」
そのまま奴は自身の真下である地面を殴り付けた