第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
トーマによる轟音が響く
何か変化があったか――否、それは殴った本人が物語っていた
「チッ、またハズレかよ」
その言葉通りまたボスが別の場所に現れた
全員が僅かに迷った――攻撃が通る前にボスは姿を消す
普通では通らない、が攻撃をしなければならない
どうする――迷う間にボスの目が光出した
「今だぁ‼」
何らかの行動は攻撃に繋がる率が高い
そしてそれを出す瞬間は往々にして隙が生じる
それを見越したケンタが駆け出した
敵の攻撃よりも早く繰り出した一撃――降り下ろされた一撃は、再び通り過ぎた
「またかよ!?」
直後離れた位置に現れたボスが瞳の部分から光を放った
寸での所でケンタはそれを回避――誰にも命中せず空を切った
「面倒な奴だな、どう攻略する」
「って言っても、攻撃通んないんじゃどうしようもないじゃん」
「方法はあると思う」
「面倒臭ぇな、ぶちのめすの一択だろうがよ‼」
そう言ってトーマがまた飛び出す
「馬鹿‼」
叫んだものの時既に遅く拳を突き出した後だった
再びボスは姿を消し、ケンタの後ろに現れる
「避けて」
即座にエリーが矢を放つ
警告もあってかケンタは射線から下がる
だがボスもこれまでと同じく消えてしまう
「わ、わ、こっち来た!」
偶然か何か矢は射線上にいたクリスへ向かう
そちらまで警告は届かなかったか、本人が気付かなかったか――ともかく同士討ちの可能性が生まれた
「ああもう、アンタは‼」
寸での所でリアナがクリスを引っ張る
幸いにもクリスは射線から外れ、それまでいた位置に矢が刺さる
瞬間、けたたましい悲鳴が鳴り響いた
その出所は、クリスの影であった