第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
その後、私達は五十一層の迷宮区へ向かいボス部屋の前に辿り着いた
溜め息が漏れる
やる意味よりもまず出来るか出来ないかという点が問題だ
私達七人の内、一人でも死んでは何にもならない
そんな不安を見透かすように、扉には瞳の絵が描かれている
この行動――後には少なからず影響は出るだろう
それでも私達は、薄く光の射す中へ進んでいった
すぐに景色が見える
それは今までとは異なり、周りに何もないと言える平地
そして地面は新聞紙のような色合いをしている
実に不気味にシンプルであった
直後、視界を遮る霧がかかる
周りは確認出来る――しかし、これが始まりと何となく察した
剣を抜き、構える
霧の向こうで紙が擦れる音が響く
それは集合するように音量を増し――巨大な影を造る
そして霧が晴れると同時に、ボスが姿を現した
真っ黒の球体――下半分が地面の中にあり半球にも見える
こちらの正面には瞳なのか更に漆黒の円が見回すように蠢く
現れるHPバー、記される名は"AMENO-SAGIRI"――アメノサギリらしい
「ハッ、日本の神だろうが知った事かよォ‼」
直後、トーマが飛び出す
らしいと言えばらしい、しかし余りにも危険だ
「ちょっと! アレが何するか分かんないのに――」
「オルァ‼」
制止にも似た私の声も無視して奴は拳を振るった
だが、それは通らなかった
否、通り過ぎたと言っていい
ボスが姿を消したのだ