第29章 第51層～第60層 その1 "新生"

｢まさかな…!｣

｢カハッ…やっと来たじゃん｣

本能的な危機感がジンに距離を取らせ､トーマを高揚させる

｢何､アレ…｣

｢よく分かんないけど凄そうだよリアナ｣

人の出せる筈のない気にある種の戦慄をクリスとリアナは覚える
その咆哮は､辺りの空間を歪に振動させ､響き渡った

｢おおおぉぉぉぉぉぉ!!｣


それは慟哭――
今は亡き者達への､切なる叫び

それは嘆き――
命にかけられた絶望的な宿命への､内なる叫び

そしてそれは､誓い――
宿命へ､世界へ反抗する魂の叫び

(もう負けないから…今はちょっとだけ､力を貸してください…!)

ここに彼女は再び起つ
生きとしものを消さぬ為､亡きものを失わぬ為､再び剣という牙を使う

直後､リリィがジンの正面から消える
ジンは一瞬驚くも､素早く対応した

上――リリィは左腕を叩きつけるように跳躍していた
そして同時に凄まじい勢いで距離を詰める

｢チッ!｣

剣の腹を盾代わりにして､ジンはリリィの攻撃を防いだ
しかしその力は先程――否､今まで自身が知った以上のものであった
そして重要な点――彼女はジンの剣をまだ左手で殴っているだけに過ぎない
つまり､剣がまだ残っている

｢おおおぉぉぉ!!｣

ブーストも無しにリリィは剣を叩きつける
それだけで地が割れ､ジンのいる場所が僅かに沈んだ

(ここで化けたか…!)

目を見張るべき変化
彼女の変化であり進化であると素直に認めるべきだろうと彼は思った
今の間に彼女の心象に変化が起きた､それも劇的に
故に彼女は普通では信じられない力を発揮している
素直に強いと認めるべきだろう

だが――

｢勝負である以上引き下がる訳にはいかないんでな!!｣

ジンも自身の矜持をもってリリィを弾いた