第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
断言のように響いた一言に、私の動きは止まる
そして、言い返す事も反撃も出来なかった
「お前、前に見た時はもっと強かっただろ。仲間がいなくなって急に恐くなったのか?」
上体を起こした時に響いた声
その一言が私に突き刺さる
「当然死なれるのに何も思わない奴はいない。だがな、自分が死なない限り自分の人生に終わりは無い。それでも何も出来ない甘ったれは男だ女だの前に、死んでる奴でしかない。そして、既に死んだ奴を更に殺すだけでしかない」
頭の先に切っ先を感じる
これで、終わりだろうか
「……無駄だったな、アイツ等全員」
続く一言が更に抉り込む
無駄――皆が無駄
ならば、そうしているのは私なんだ
だが、だからと言って私に何が出来る
何も…出来ない…
「無駄なもんかよ!!」
唐突に意識の外から声が響く
声の方に視線を向けた先――ケンタであった
「世の中人間がそんな簡単に無駄になってたまるか!! 戦ってみせろリリィ! 目の前の現実と、オマエの絶望と!」
力の限り叫ぶケンタ
そうだ――私の恐怖、私の絶望が私を落とそうとしているなら――
「リリィ。私達、生きてるよ。偶然もあるかもしれない、でも今ここにいるのは部長や皆がいたから。それは本物。もうその時には戻れないけど、本当の事。だから戦おう、本物を嘘にしない為に」
変わらぬ口調でありながら、力強さを感じるエリー
そうだ――誰が何と言おうと、皆がいた事は本物
戦わない事が嘘にすると言うのなら――
「私は…諦めたくない…」
小さく漏れた言葉――それは新たに生まれた欲
死にたくない、皆と生きたい、そして生きる事を諦めたくない
今はもう記憶にしかいない大切な人達
ミヤ、ユウ、セレナさん、シンジ先輩、そして部長
彼らを真に消さない為にも、私は戦う
剣を握る手に力が込もる
決意に似た欲は、私が私自身で封じた力を甦らせた
頭の中の引き出し――忌むべき獣
私が生きる為の、世界への抵抗
「おおおぉぉぉぉぉぉ!!」
私はそれを、解き放った