第29章 第51層~第60層 その1 "新生"
示された条件――それはある意味当然かもしれない
仮に仲間になったとして、誰かが足を引っ張るようでは聖槍十三騎士団は到底倒せない
しかしトーマはまるで簡単な算数を出されたかのような口調で答えた
「いいぜやってやるよ、コイツがな」
「は?」
私の背中を軽く叩き、まるで任せるとばかりに私を推す
「何でやらなきゃならないの」
「そらお前簡単だ、お前がつまらなさそうな顔してるからな。ちょっとは楽しんでこいって訳だ」
「はぁ? 訳分かんない事言わないで――」
「んな一々ゴチャゴチャ言うんじゃねぇっての。死なない程度にしてやるから安心しろ」
まるで口答えするなと言いたげに話すトーマは勝手に私の腕を掴み、動かしてメニューを操作する
「ちょっと、止めて――離して」
腕を掴む奴の手を払おうとするが、無理矢理動かされメニューを操作――デュエルを申し込む形となってしまった
「……良いだろう」
しかもジンはこれを受けてしまった
席から立ち上がり、道の中央でストレージから自身の両手剣を取り出した
「オラ行け」
トーマが私を押した事で、私も道の真ん中へ躍り出る
仕方なしに剣を取り出す
まだ、手が震えている
目の前のウインドウはジンとのデュエル――半減決着とされている
死ぬ事はない、が……
「始める前に言っておく」
開始まで響く時計の針の音
その中でジンは口を開いた
「惜しい奴を亡くした」
「…ぁ」
悼む言葉――シンジ先輩と上手くやっていた事を、不意に思い出した
「他のいない奴も、そういう事なんだろう。俺にはもうどうこう出来ん。だからこそだ、お前の力を見せてみろ」
直後、開始を告げる音が響いた